米連邦準備理事会

米連邦準備理事会(FRB)がついに利下げに転じ、中央銀行と新型コロナウイルス禍後のインフレとの戦いは大きな転換点を迎えた。だがFRB自身、労働市場の悪化リスクをまだ計りかねており、「データ次第」という不安定な金融政策運営は変わらない。

「世界中のほかの中銀の多くは数回にわたって金利を引き下げたが、我々は待った。その忍耐が実を結び、インフレ率が2%まで低下する確信が得られた。だからこそきょう、このような強力な措置が可能となった」

パウエルFRB議長は18日、0.5%の大幅な利下げを決めた米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、勇ましい言葉を連ねた。

だが「倍速」利下げの本当の理由はわからない。雇用悪化のリスクに先手を打ったのか、後手に回った失態を繕う狙いなのか。実はFRB自身も判然としないのではないか。

米利下げの成否は世界の経済や市場に大きな影響を及ぼす。日銀の金融政策の正常化も米景気の軟着陸が大前提だ。FRBは利下げ着手に際し、表向き軟着陸に自信を示し、市場の混乱も回避した。だが植田和男総裁は20日の会見で「軟着陸か厳しめな調整かを丁寧に見極めたい」と警戒感をみせた。

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